インキャな私が“接客の最前線”に立った話


私は、コミュニケーション能力や自己表現が壊滅的なインキャでした。
そんな私の採用にあたっての条件書に書かれた配属先は、よりにもよってホテルのフロントだったのです。
正直、辞退したかった。
でも、ブラック企業では、泣きそうになりながら、渾身の勇気を振り絞って提出した退職届は何度も差し戻されていました。
「次の就職が決まってからにしろ。それが、お前のためだ」
そう言われるたびに、自分の意思なんて無力なんだと感じたのです。
今よりも苦しい職場なんてない。
そう思って、フロント採用で入社を決めました。
フロント配属の現実と、前職との“天と地”の差

苦手な接客でも「受け入れてもらえたなら、もうそれでいい」と思っていました。
フロントに立っていた私は、毎日お客様の波にのまれていました。
要求も違えば、態度も違う。怒鳴られることもあります。…でも、それでも前職に比べたら、天国でした。
- シフト制だから、終電逃すような残業はない
- トラブルは“チーム”で処理する文化がある
- 自分の働きが、誰かの笑顔や「ありがとう」につながる
それが、私の心を少しずつ救っていったのです。
「パソコンができるだけ」でヒーローになれる職場

ホテル業界は意外にも“アナログ”が残る世界でした。
PC操作が苦手な人が多い中、前職で少し触っていた私は、気づけば「ちょっと頼られる存在」になっていました。
これは小さなことですが、確実に自信につながりました。
ホテル業界の“人の流動性”と“出会いの多さ”

ホテル業界は、転職がとても多い業界です。
「1つの施設に何年もいる人」の方が少ないくらいです。
それは悪い意味ではなく、スキルや経験を活かして、ステップアップしていくのが“普通”な文化なのです。
だからこそ、男女問わず、本当に多くの人と出会えます。
そして、私はその“出会い”に救われました。
おわりに

どこでもよかった。ただ、とにかく前の環境から抜け出したかった。
苦手な接客でさえ、当時の私には“逃げ道”に見えたのです。
…でも今、ここにいてよかったと思えています。
- 誰かのために働いて、感謝される喜び
- 自分を否定されない職場
そんなものが、この業界には確かにあります。